今年も図書館の館長になる(選書をご紹介・後編)
東久留市立中央図書館で、2015年から「本を作る人、売る人、読書がつながる活動をする」ことを目的に開催されている「図書館フェス」。
そのイベントの一つ「ひとハコ図書館」に昨年、参加させていただいたのですが、今年も「ひとハコ」に入るおすすめの本を選び、東久留米市立中央図書館に展示していただきました!
本好き、図書館好き、書店好きの編集長、もう大喜びで選びますので、ほかの図書館の皆さまも、ぜひご依頼ください(趣味なので無料です)!
前編はこちら
https://tamakita.com/blog/2023hitohakotoshokan/
では、選書の紹介後編です。
6 サバカン SABAKAN
(金沢 知樹著/文藝春秋)
僕には【サバの味噌煮の缶詰】を見ると思い出す友だちがいる。 冒険に出かけたふたりの少年がさまざまな体験を通じ絆を深めていく姿を描く。1986年夏の長崎。小学生の久田はある日、家が貧乏なせいでクラスの嫌われ者だった竹本とひょんなことから“イルカを見るため”に久田の自転車に乗ってブーメラン島を目指すことに。小学校最後の夏休み、僕はタケちゃんと一緒に冒険の旅に出た。散々な目に合うが、この冒険をきっかけに二人の友情が深まる中、別れを予感させる悲しい事件が起こってしまう。笑いと涙の映画『サバカン SABAKAN』の原作小説。
ごはんポイントはもちろんサバの缶詰。私はサンマの缶詰が好きでして、サバの缶詰を使った、この本に出てくる料理も食べてみたいなと思いました。幼少時の経済格差ってとても大きなテーマで、私もだいぶ貧しかったのですが、だからこそタケちゃんみたいに冒険したり、負けなかったりする部分もあります。子どもって強いですよね。それにしてもサンマの缶詰、以前は節約食品だったのですが、最近高くて買っていません。
7 知識ゼロからの駅弁入門
(桜井寛, はやせ淳著/幻冬舎)
世界一の駅弁大国、ニッポンの「駅弁」。鉄道の旅と言えば駅弁が楽しみの一つです。旅先で、おうちで、全国各地の味を楽めます。日本以外の国では見られない独自の鉄道文化。駅弁の歴史、種類、バラエティ豊かな容器・包装、世界の駅弁事情といった基礎知識の解説。全国津々浦々の駅弁を、定番から話題の駅弁までを、人気漫画はやせ淳氏『駅弁ひとり旅』を使用して完全解説。「駅弁」のすべてがこの一冊でわかる内容となっています。
電車に乗らなくても駅弁は食べたい。スーパーでも駅弁大会は人気です。この本を見ているだけで旅気分。東京駅へ行きたくなりました。駅弁ひとり旅、いつかしてみたいです。
8 BUTTER
(柚木 麻子著/新潮社)
男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子(カジマナ)。世間を騒がせたのは、彼女の決して若くも美しくもない容姿と、女性としての自信に満ち溢れた言動だった。週刊誌で働く30代の女性記者の町田里佳は、親友の伶子の助言をもとに梶井の面会を取り付ける。梶井への取材を重ねるうち、欲望に忠実な梶井の言動に里佳の内面も外見も変貌し、伶子や恋人の誠らの運命をも変えてゆく。フェミニストとマーガリンを嫌悪する梶井は、里佳にあることを命じる。各紙誌絶賛の圧倒的長編小説。
男性からお金を搾取し、毒殺したとして有罪判決を受けた木嶋佳苗死刑囚がモデル。不思議なのですが、こういうカリスマ性を持った人、身近に意外といます。この本のごはんポイントは、タイトルにあります「バター」。エシレバターというフランスのバターが出てくるのですが、いまだ憧れたままです。ロブションにも、銀座ウエストのクリスマスケーキにも憧れたまま。来年はこれらを食べるのが目標です。
9 森のなかの海
(宮本 輝著/光文社)
平穏な日々の崩壊、そして再生していく人間たち。 阪神淡路地区を大地震が襲い、36歳の仙田希美子は家族を失った。地震の直後に夫は愛人へ。離婚を決意した希美子は、学生時代に知り合った老婦人、毛利カナ江から奥飛騨の森と山荘を相続して2人の息子と再出発をはかる。かつての隣人の三姉妹を引き取り、更に姉妹を頼って来た七人の少女も受け入れることに。山荘の森にある巨木〈大海〉の根元から見つけた不思議な水差の中には一通の封書と、小さな骨が…。カナ江に隠された過去の真実とは。現代人の魂の癒し、再生を描く文芸大作。
宮本輝は昔から好きで、ほとんどの作品を読みました。最初に書簡形式の小説『錦繍』を読んで、「こんな書き方もあるのか」と感動しました。『森のなかの海』は、内容よりも森でとれる栗、その落ちる音、マロングラッセの描写がずっと頭に残っているのです。旅をして、暗い森に出会うと、この小説とおいしいマロングラッセが頭に浮かびます。
10 月曜日の抹茶カフェ
(青山 美智子著/宝島社)
一杯の抹茶から始まる、東京と京都をつなぐ12ヶ月の心癒やされるストーリー。川沿いの桜並木のそばに佇む喫茶店「マーブル・カフェ」。定休日の月曜日に、1度だけ「抹茶カフェ」を開くことに。「抹茶カフェ」を任されたのは、京の老舗茶問屋福居堂の若旦那の吉平。無愛想に抹茶をたてる1日店長吉平とツイていない携帯ショップに勤める26歳の美保が出会うことからはじまる。妻を怒らせてしまった夫とランジェリーショップ兼店主、恋人と別れたばかりのシンガーと祖母と折り合いが悪い紙芝居師、京都老舗和菓子屋の元女将と自分と同じ名前の京菓子を買いにきたサラリーマン。様々な登場人物が現れ、不思議な縁で繋がっていきます。
お抹茶を飲んだときのように、清涼感のある一冊。ドロドロしたところがなくて、でもほろ苦くて、上品な語り口です。家族ストーリーあり、恋愛あり。若い人もさっぱり読めると思います。それにしても、抹茶カフェ、いいですね。いろいろな人がふらりと入ってこられる抹茶カフェをやってみたいけれども、経営は大変そう。編集者は小料理屋をはじめるイメージが強いのですが(?)、私はいつか抹茶カフェも実現したいと思います。
というわけで、駆け足で10冊をご紹介しました。選書の依頼を受けてから実はそのまま提出を忘れてしまい(すみません)、「どうでしょうか…」とご連絡をいただいて慌てて選書表に記入を開始。役に立ったのが読書記録でした。感想までは書いていないけれども、読んだ本のタイトルと作者だけはメモしているのです。それだけでも、内容がありありと浮かんできて、ささっと選書表を提出できました。読んだ本のタイトルと作者のメモ、おすすめです。
また来年も、選書させていただけますように。ほかの図書館さんからのご依頼もお待ちしております!
編集長 原田あやめ