今年も図書館の館長になる(選書をご紹介・前編)
東久留市立中央図書館で、2015年から「本を作る人、売る人、読書がつながる活動をする」ことを目的に開催されている「図書館フェス」。
そのイベントの一つ「ひとハコ図書館」に昨年、参加させていただいたのですが、今年も「ひとハコ」に入るおすすめの本を選び、東久留米市立中央図書館に展示していただきました!
本好き、図書館好き、書店好きの編集長、もう大喜びで選びますので、ほかの図書館の皆さまも、ぜひご依頼ください(趣味なので無料です)!
では、選書の紹介前編です。
1 ライオンのおやつ
(小川 糸著/ポプラ社)
ある日医師から余命を宣告された29才の雫は、最後の日々を過ごす場所に瀬戸内の海が見えるホスピス「ライオンの家」を選び、本当にしたかったことを考える。「ライオンの家」では入居者が生きているうちにもう一度食べたい思い出のおやつをリクエストできる「おやつの時間」がある。しかし雫は選べずにいた。そこに暮らす人たちとの出会いと友情が、雫にたいせつなことを思い出させてくれる。人々の命の輝き、出会いと絆、感動の物語。
ごはんポイントは、「蘇」。体が弱った人も食べやすい、栄養のあるおいしそうなものが出てくるのですが、牛乳を煮詰めて作る「蘇」が食べたくなり、作ったことがあります。「蘇」は「牛乳余り」が起きたとき、牛乳大量消費レシピとしても話題になりました。原始的な甘さ、疲れたときにもおすすめです。
2 食堂かたつむり(小川糸 著/ポプラ社)
(小川 糸著/ポプラ社)
同棲していた恋人に家財道具一式や祖母から受け継いだ調理道具、食材全てを持ち逃げされ、ショックから心因性失声症になってしまった倫子は、自由奔放な母の暮らす田舎へ戻り、実家の離れで「食堂かたつむり」を開く。1日1組の予約制でお客のためにイメージを膨らませて料理を作るうち、倫子は徐々に元気を取り戻していき、彼女の料理は食べた人に奇跡を起こす。やがて、倫子の食堂で食事をすると願いがかなうという噂が町中に広まっていき、食堂は評判になるが…。映画化もされた小川糸のベストセラー小説。
こちらは食堂だけにいろいろな食事が出てくるのですが、私に刺さったのは「ぬか漬け」。なぜそんなにぬか床が大事なのか?とこの本を読んで思って、ぬか床を作り始めました。いろいろな料理が出てきて、それはおいしそうというより「生々しい」かも。そこが魅力の本でもあります。
3 コーヒーが冷めないうちに
(川口 俊和著/サンマーク出版)
「ここに来れば、過去に戻れるって、ほんとうですか?」時田数が働く喫茶店「フニクリフニクラ」には、ある席に座ると望み通りの時間に戻れるという不思議な噂があった。過去に戻る全てのルールを守った時、優しい奇跡が舞い降りるのだという。果たしてタイムトラベルに成功した人達の結末は一体…。「フニクリフニクラ」に訪れた4人の女性たちが自分自身の秘められた過去に向き合っていく。今生きていることをもう一度考えさせられる、愛と後悔、感動の物語。
喫茶店のお話で、ごはんというか、飲食物ということでコーヒーがポイント。戯曲が元になっているので、テンポ良く読みやすい本です。たまきた2023-2024年冬号にも、コーヒー、紅茶、喫茶店のお話たっぷり。ぜひご覧ください。
4 漁港の肉子ちゃん
(西 加奈子著/幻冬舎)
「普通が一番ええのやで」直木賞作家・西加奈子の同名ベストセラー小説。明石家さんまの企画・プロデュースでアニメ映画化。北陸の漁港で船に住む二人きりの母娘の半年間の物語。太っていて不細工で、食いしん坊で情に厚く、すぐ男にだまされてしまう脳天気な母・肉子ちゃんとしっかり者で美しく知的な11歳の娘キクコ(キクりん)。キクりんは、そんなお母さんが最近少し恥ずかしい。やがて母娘の秘密が明らかになり、2人に最高の奇跡が訪れる。
生い立ちが切ない主人公ですが、そんなこともあんなことも関係なく本物の愛情を注ぐ肉子ちゃん。本能のままに人間が生きるとこうなるのかな…とちょっと憧れます。「肉」が名前に入っているのと、漁港の食堂での風景が印象的なのがごはんポイントです。
5 コンビニ人間
(村田 沙耶香著/文藝春秋)
世界各国にて翻訳され、米国〈ニューヨーカー〉誌のベストブック2018に選ばれるなど、世界各国で読まれている話題作
36歳未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目。日々コンビニ食を食べ、コンビニ店員としてしか生きられなくなった主人公・古倉恵子。小さい頃から「普通」の感覚が分からずに過ごし、周囲からはどうすれば「治る」かと心配されて育つ。ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと言われるが、恵子はコンビニをクビになった白羽さんとの歪な共同生活を始めるのだった。
「普通」な生き方ではないけれど、なんとなく最後は「この人のほうがまともなのかも」と思ってしまう本。コンビニのいろいろな面が見えて、コンビニにはごはんが置いてあるから…とややこじつけで選んだのですが、印象深かったので選びました。コンビニのお菓子などを陳列するときに、こんな判断をしているのか、と感心して、コンビニ店員さんってすごいなと思った一冊です。