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岩田ユキさん(映画監督)

たまきた地域で活躍する人にインタビューする「たまきた人」。
今回は小平市在住の映画監督、岩田ユキさんにお話を伺いました。

「できない」と「うまくできない」は同じじゃない

岩田ユキ(いわた ゆき)
1972年生まれ・静岡県出身、小平市在住。映画監督、キャラクターデザイナー、イラストレーター、漫画家。総務職を経て専門学校でデザインを学び、企業で文房具やキャラクターのデザインを手掛ける。退職し、セツ・モードセミナーに入学。イメージフォーラム研究所・ENBUゼミナールで映像や脚本を学ぶ。卒業制作作品『ここからの景』でぴあフィルムフェスティバル審査員特別賞など、多数の受賞歴を持つ。2007年『檸檬のころ』、2009年『8ミリメートル』、2011年『指輪をはめたい』脚本・監督。現在は一児の母で、3歳の育児をしながら漫画やイラスト制作を中心に活動。近著は『ようこそ、自由の森の学食へ』(早川書房)。

 

―初めてお会いしたときに、映画監督だと聞いて驚きました。「映画監督は怖い人」というイメージがあったのですが、全然そうではなかったので。

岩田 映画監督って、サングラスをかけていて怒鳴っているイメージがありますよね。私は大きな声を出すのは苦手です。

―監督というとリーダーという面もあると思うのですが、ぐいぐい引っ張る人だけが何か作り上げるわけではないんですね。

岩田 映像の仕事は一人でイラストを描いてるのとは違って、いろいろな人に的確に指示をしなければ作品ができていきません。でも、私は俳優さんと話していて「監督、何が言いたいの?」という空気になることもしょっちゅうです(笑)。
ただ、「できない」と「うまくできない」は同じじゃないと思うんです。うまく指示はできなかったけど伝わった事もあって作品はできていますし、「この映画が好き」と言ってくれる人もいます。頑固なので、一度はスタッフの意見を受け入れても、「ねえ、やっぱりこうじゃないかな…」とネチネチ言っています(笑)。上手にみんなのモチベーションを上げて引っ張ったりできなくても、最後で「駄目だ」と思うものをスルーしないところがあれば、ギリギリ監督なんだと思います。

岩田さんが脚本・監督を手掛けた映画作品『指輪をはめたい』。 主演/山田孝之

 

―子どものときから映画監督を目指していたのですか?

いえ、絵を描くのは昔から好きだったんですが、「好きなことは趣味のままで終わらせたほうがいい、仕事にしたら好きなことが嫌いになる」と母に言われていて。それを信じていたのもあって、高校を出たらゴルフ場の総務課に就職したんです。でも、会社で社内運動会のポスターの絵などを任されたときに、業務中でも夢中でその絵を描いてしまって怒られることがあって、「誰にも言われなくてもこんなに夢中でやってしまうようなことを仕事にできたらいいないな」と思い始めて、退職して名古屋のデザインの専門学校に入りました。

―それは思い切った決断ですよね。

岩田 総務の仕事が向かずに失敗が多すぎて辞めたかったというマイナスな理由もあるんですが(笑)、「逃げるなら、前に逃げよう」と思ったのもあるんです。専門学校を出て5年間キャラクターデザインの仕事をしたあと、東京で映像を学びました。

『指輪をはめたい』の製作現場。大きな声を出せず「よーい、スタート!」助監督に言ってもらうという。静かな雰囲気と親しみやすさが作品にも表れる。

 

―映像に興味を持ったのは何故ですか?

岩田 キャラクターを作っていたことの延長で、その絵を動かしたいと思ったんです。今は携帯電話で簡単に動画が撮れますが、当時は映像が撮りたければ学校でカメラの使い方を習うしかない時代でした。その学校で、友達が8ミリフィルムで撮った夕景が、あまりにもきれいで。それで実写にも興味を持ち、絵の要素も入れたくて、着ぐるみを自作して出演させて風景と合わせ作品を作りました。
それから違う学校に行って脚本も学びました。卒業制作作品の『ここからの景』が「ぴあフィルムフェスティバル審査員特別賞」をいただいたんですが、それを見たプロデューサーから、『檸檬のころ』の監督のお話をいただいたんです。

―『ここからの景』も『檸檬のころ』も、中高生のお話ですね。なぜその年代の人を描こうと思ったのですか?

岩田 当時はずっと映像を作ろうとは思っていなくて、最後に一個何か撮れるとするなら、自分の一つを切り売りして、一番恥ずかしい思い出を出そうと思ったんです。『ここからの景』は学級新聞で「嫌いな人ランキング」3位になった子の話ですが、私が中学生のときに本当にそういうランキングで1位になったことがあって。全国の同じ思いをしている子も笑えるようなものを作ろうと思いました。
それに、青春のぐちゃぐちゃや、思春期独特の変な意地の張り方が人間くさくていいなと思ったんです。

長編デビュー作『檸檬のころ』 主演/榮倉奈々、谷村美月

―それがデビュー作につながったんですね。今はご自身に小さいお子さんがいらっしゃいますが、今も映画を作るのですか?

岩田 映画監督は自分の24時間を捧げる仕事なので、子育てをしながらは難しくて。今はイラストと漫画が中心です。

―子育てとの両立で大変なことは?

岩田 キャラクターの気持ちにガン!と入り込んでいる時間が、子どもが泣くと強制終了になるのは悩みです。作業は下りのエスカレーターを駆け上ってるみたいで、一旦手を止めてしまうとグンと後戻りしていて、没頭状態に戻るまで、また下から走り直しになるんです。赤ちゃんのときは仕事時間を確保するのも大変でしたが、今は保育園に入っているので、日中は仕事の時間に充てています。

―今後はどんなものを作りたいですか?

岩田 漫画で表現したいことがたくさんあって、子供が寝た後に描き進めています。
オリジナルの物語を漫画で発表するのが、今一番やりたいことです。

―ありがとうございました。

近著『ようこそ、自由の森の学食へ』(早川書房)

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