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街は物語を記憶する・西洋善処 創喜

たまきたの地域に住むピアニストの女性とランチをしながら若いころのバイト話をしていて(彼女は今も若いが)、たまたまタイトルのお店の話になった。

「“創喜”っていうお店が東大和にあったの、知ってますか」と彼女。

「あ、青梅街道を脇道に入ったところの。フライパンが看板になってませんでした?」と私。

「そうだったかな…よく知ってますね、結構目に留まらない場所にあるのに」

「アイスコーヒーに凍らせたコーヒーが入っていたり(味が薄くならないための配慮)、お料理にお花が添えてあったりって気づかいも細やかだったし、テリーヌがおいしくて。たまに行ってたんですよ」

「私、あのお店に高校生のころ、手紙を書いたんです。お店でピアノを弾かせてくれませんかって。電話をしても、なかなかつながらなかったので。そしたら、しばらくして電話がかかってきたんです。『ピアノをお店に入れたから弾きに来なさい』って」

「え? そのためにピアノを買われたの?」

「あとで聞いたら、たまたま近所でピアノを処分したい人がいて、私がピアノを弾きたいと言ったから、それを引き受けたんですって。母親には、『あなたのためにピアノを用意させちゃったじゃないの』って怒られましたけど(笑)。それで、夜、アルバイトで弾きに行くようになったんです。お料理やお客さんの食事を邪魔しないように弾くっていうのが難しくて怒られたりもしたんですけど、いい経験をさせてもらいました」

創喜は、確かオーナーの地元らしい横浜に移転したと聞いた。近所でおいしいフレンチが食べられてわりと気軽に入れるお店だったので、移転は残念に思っていた。それから10年くらいはたっている気がするけど、まさかこんなところで創喜の話が出て来るとは思わなかったし、高校生だった彼女の度胸とか手紙を書くという真摯さや熱意、それに応えるオーナーさんの心意気と、高校生にちゃんと、「お店で弾くというのはどういうことか」を教えようとした誠実さ。そういう人が作っていたから、やっぱりおいしかったんだろうなと味まで蘇ってくる。

時を超えて、それが私のところに伝わってくることを不思議に思う。

人は物語で記憶する。街は物語を記憶する。

最近これを、たまきたのコンテンツのキャッチコピーとしている。

街は物語を記憶している。そして人を通して何かのきっかけで蘇らせる。過去の物語も、今の物語も。

 

移転したが、まだ情報が残っていた。→食べログ

※冒頭の写真はイメージ写真

 

原田あやめ

 

 

 

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